第9回  「慢性腰痛には筋トレが有効!」(2013.3.27)

             (朝日新聞2013年3月24日版より)

【辻外記子】腰痛の人は全国に推定で2800万人いることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。
40~60代の約4割が悩んでいた。関係学会は、一般的な治療法ごとにお勧め度をまとめた。
原因不明の腰痛では、安静よりも運動が効果的で、1カ月以上続く痛みにはマッサージの効果ははっきりしなかった。
ストレスなど心理的な影響も腰痛の引き金になると認定した。

 厚労省研究班(主任研究者=吉村典子・東大病院特任准教授)は
東京や新潟、広島など全国8カ所の住民約1万2千人分のデータを分析した。
医師による問診などで、「腰に痛みがある」「1カ月以内に1日以上痛みがあった」人の割合は、60代が4割強でピークだった。
40代、50代も4割前後で、70代以上は下がる傾向があった。男女比は4対6だった。

 痛み止め、温熱、マッサージ、腰の牽引(けんいん)……。様々な腰痛の治療法、どれが本当に効くのか。
日本整形外科学会と日本腰痛学会は、一般的な治療法の信頼度を診療指針にまとめた。
白土修・福島県立医科大教授(会津医療センター準備室)らが、国内外の約200の論文を分析した。

 腰痛は、背骨のがんや、腰椎(ようつい)骨折、椎間板(ついかんばん)ヘルニア、
脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症などでも起こる。
こうした病気が疑われれば、すぐに画像検査をして、もとの病気を治す必要があるという。

 一方、こうした病気がなく、原因不明の腰痛は全体の8割以上を占めるという。
指針では、こうした腰痛には、抗炎症薬や鎮痛薬などの「薬物療法」が強く勧められた。
3カ月以上痛みが続く慢性腰痛では、ストレッチやウオーキングなどの運動もお勧めだ。

 また、腰痛にはストレスがよくないと判断された。
うつ状態や仕事上の不満、人間関係に悩みがあると、腰痛になったり、治りにくくなったりするとの論文には十分な根拠があったという。このため、慢性腰痛では抗不安薬、抗うつ薬も有効な治療薬に挙げられた。鎮痛薬などが効かず心理的な影響が疑われれば、整形外科医らが処方する。

 一方で、安静は必ずしもよくないそうだ。
日常生活を続けるほうが、痛みが軽くなり、仕事を休む期間が短くなるという。
マッサージや腰の牽引の効果ははっきりした根拠がなかった。
いずれも、指針作りの参考にした複数の論文で結論が異なっていた。

 白土さんは「多くが悩む腰痛の治療について、統一的な見解が必要だった。正しい理解を広めてほしい」と話す。

運動療法に効果があることが立証された形となりました。
腰痛や肩こりには筋力トレーニングやストレッチなどのエクササイズが効果があります。